ボーンがスマホで誰かと話している。

ボーン

ジェイク、オレだ、ボーンだ。

ジェイク

・・・ボーンか。

・・・どうだ?
“チップ”は見つかったか!?

ボーン

いや、まだだ。
あのチップはまだ見つかっていない。

ジェイク

・・・そうか。

ジェイク

しかし、おめーがオレの作ったノートPCを本当に爆破させたと聞いたときは、正直ビビったぜ。

ボーン

・・・すまん。
あれは不可抗力だった。

爆発を回想するボーン

説明しよう!

ボーンは1年前、都内にある某家具店のWebコンサルティングを行っていた。
しかし、その家具店はある“悪の組織”に狙われており、ボーンもその組織と闘うこととなる。

人質を捕らえられ組織に監禁されてしまったボーンだったが、所有していたノートPCのCPUを放熱させることで大爆発を起こし、監禁から脱出することに成功する。
ノートPCは粉々になってしまったが、ボーンは窮地を脱し、人質を救うことに成功したのだった。

詳しくは、前作「沈黙のWebマーケティング」で確認してほしい。

ジェイク

以前のお前のノートPCに施していた仕様は、あのチップが奪われそうになったときの最終手段だった。

ボーン

・・・まさか、オレのPCにあんなチップが隠されていたとはな。

ジェイク

ま、大事なモノを隠すのなら、肌身離さず持っているモノの中に隠すのが定石さ。
なにはともあれ、あのチップの存在を秘密にしていたことは謝る。

ボーン

・・・フッ。
もういいさ。
あのチップのおかげで、オレは今日もこうして生きているとも言えるからな。

ジェイク

・・・とにかくだ。
あのチップを必ず回収してくれ。

あのチップはちょっとやそっとで砕ける代物じゃねえ。
だから、あんな爆発程度で燃え尽きたとは考えにくい。

その証拠に、最近、あのチップからの信号をGPS経由で確認したわけだからな。

ボーン

ああ。
今、オレとヴェロニカはそのGPSが指し示す場所にいる。

ジェイク

・・・ただ、あのチップからの信号は日ごとに弱くなっている。
おそらくは内蔵電池が消耗しているんだろう。

チップとの信号のやりとりができなくなるまで、おそらく、あと60日。

信号が微弱になった分、場所の特定には時間がかかると思うが、なんとかあのチップを探し出してくれ。

ボーン

・・・わかった。

ジェイク

ボーン。
お前の親父が隠し続けたあのチップの存在が世界にバレれば、この世のあらゆる法則が変わってしまう。
それは憶えておいてくれよ。

ボーン

・・・ああ。

プツンッ

ボーン

親父・・・。
あんたが本当に守りたかったのは・・・。

ボーンの父親が命を落としたときのことを回想



その頃

みやび屋

サツキ

うーん・・・。

ムツミ

アネキ、どうしたんだ?

サツキ

1週間前、ムツミが作ってくれたコンテンツだけど、やっぱり、あのコンテンツ経由での予約が発生していないようなの・・・。

ムツミ

えっ・・・。

サツキ

前も言ったとおり、あのコンテンツを読んだ人が、うちを予約してくださるイメージがつかないのよ。
だって、あのコンテンツでは栃木にある50もの温泉旅館を一気に紹介しているわけだから、どう考えても、あの中からうちだけを選んでもらえる気がしなくて・・・。

ムツミ

むむむ・・・。
そうだよな・・・。

上位表示するだけじゃ予約に結びつかないってわけか・・・。

どうすりゃいいんだ・・・。

ヴェロニカ

どうしたの?
ふたりとも。

風呂上がりで浴衣を着ている色っぽいヴェロニカ。サツキとムツミがその姿を見ている。

サツキ

あっ!ヴェロニカさん!

ヴェロニカ

女将、ほんと、ここの温泉は気持ちいいわね。

サツキ

そう言っていただけてうれしいです!

ムツミ

(ポカーン)

サツキ

ちょっと、ムツミ、どうしたの?

ムツミ

えっ・・・!?

ムツミ

あ、ああっ、え、えと・・・。
(や、やべえ、見とれちまってた・・・)

サツキ

あ、あの、ヴェロニカさん、ちょっと質問があるんですが、よろしいでしょうか・・・?

ヴェロニカ

いいわよ。

サツキ

ありがとうございます・・・!

ほら、ムツミ、さっきの質問・・・・。

ムツミ

あ、え、えと、先日片桐さんからアイデアをもらって作ったコンテンツなんですが、検索順位は上がったものの、サイトからの予約数が伸びてないんです。

で、なんでかな・・・と思っていて。

ヴェロニカ

・・・。

ムツミ

(あ・・・、さすがにずうずうしい質問だったかな・・・)

ヴェロニカ

ボーンからもらったマインドマップにはきちんと目を通した?

ムツミ

は、はい・・・。
マインドマップには何度も目を通しました。

ヴェロニカ

本当かしら?
だったら、「USP」って言葉が書かれていたことにも気付いているはずよね。

ムツミ

「USP」・・・?

机に置かれたマインドマップ

ムツミ

(USP・・・USP・・・、USPって何なんだ・・・?)

ヴェロニカ

ま、いいわ。
あなたが作ったコンテンツを見せてくれる?

ムツミ

あっ、は、はい!



ヴェロニカ

この記事ね。

みやび屋サイト内のまとめ記事

ヴェロニカ

栃木の温泉情報を取り上げている記事としては、とくに大きな問題はなさそうね。

ヴェロニカ

・・・で、ここがみやび屋を紹介している箇所・・・と。

みやび屋の紹介文

ヴェロニカ

なるほどね・・・。

ムツミ

“なるほど”・・・って。
もしかして、ヴェロニカさん、このコンテンツのよくない部分に気付かれたんですか?

ヴェロニカ

うーん、どうかしら。
ボーンなら、何か気付けるかも。

ムツミ

(き、気になる・・・)

サツキ

あ、あの・・・、ヴェロニカさん。
もし可能なら、片桐さんから追加でアドバイスをいただくことはできますか・・・?

ヴェロニカ

えっ?

ムツミ

(!?
ちょ、ちょっとアネキ・・・!?)

サツキ

す、すいません!!
うちのお客様なのに、こんなずうずうしいお願いをしちゃって・・・。

一言でいいんです・・・!
もし、一言でも何かアドバイスをいただけるなら・・・!

ヴェロニカ

・・・。

サツキ

・・・あ、あの・・・。
実は私、今、このみやび屋に新しい風が吹き始めた気がしているんです。

ヴェロニカ

新しい風?

サツキ

はい・・・。

お恥ずかしい話なんですが、私、この旅館を経営する自信をなくしていたんです。

お客様の予約が日に日に減る中、どうやってこの旅館を立て直せばいいか、毎日眠れないほど悩んでいたんです。

ムツミ

アネキ・・・。
(そんなに悩んでいたのかよ・・・)

サツキ

そんな中、ムツミが東京から帰ってきてくれました。
そして、ヴェロニカさんと片桐さんにアドバイスをいただいて作ったコンテンツも上位に表示されました。

なんというか、今、この旅館に追い風が吹き始めた気がしていて、これを逃してしまうと、せっかくのチャンスが両手からこぼれ落ちてしまう気がしているんです・・・!

ヴェロニカを見つめるサツキ。
その瞳は力強かった。

サツキ

・・・だから。
今回のコンテンツをムダにしたくないという気持ちが強くなっていて・・・。

サツキ

あっ!
す、すいません!!
お客様の前なのに、つい熱くなっちゃって・・・。

本当に申し訳ございません・・・。

ヴェロニカ

いいのよ。

・・・そうね、そこまで強い思いがあるのなら、ボーンに聞いてみてあげてもいいけれど・・・。

サツキ

えっ・・・!
あ、ありがとうございます・・・!

サツキ

ただ・・・片桐さんのコンサルティングって、お高いんですよね・・・?

ヴェロニカ

そうなのよ。

前回は私からボーンにアドバイスをねだっちゃったけれど、ボーンがもう一度、ビジネス外でアドバイスをくれるかどうかは分からないわね・・・。

サツキ

あ、もちろん、タダでということは考えていません・・・!
たとえば、うちの旅館にお泊まりいただいた代金を当館でもつことも考えています・・・!

ヴェロニカ

えっ・・・?

サツキ

うちの旅館の宿泊費程度では、片桐さんのコンサルティング料には遠く及ばないのは重々承知しています・・・!
でも、なんとか片桐さんからアドバイスをいただきたいんです・・・!

す、すいません、私、本当にずうずうしいことをお願いし・・・。

ガラララッ!

ヤンタオ(シルエット)

女将はいるアルか。

ムツミ


どなたでしょうか?

サツキ

・・・あっ・・・!!

ムツミ


アネキ、どうしたんだ・・・?

サツキ

・・・ヤンさん。

玄関に立ち、ニヤリと笑う、ヤン・タオ。 サツキがその姿を見て、浮かない顔をしている。

ムツミ

(ヤン・・・?
この人、中国の人なのか?)

ヤンタオ

女将、あの話は考えてくれたアルか?

サツキ

い、いえ・・・。

サツキ

あ、あの・・・。
私、何度もお伝えしているとおり、あなたの申し出を受け入れることはできません・・・。
本当にごめんなさい・・・。

ヤンタオ

・・・。

ヤンタオ

何が気に食わないアルか?
私と結婚すれば、アナタは巨万の富を手に入れられる、そして、アナタの旅館も安泰。
こんないい条件に、何か気に食わないことでもあるアルか?

サツキ

・・・。

ヤンタオ

さっさと大人しくワタシの奥さんになるといいアルよ。
こんなちっぽけな旅館の女将なんて辞めて、我がタオ・パイグループの社長夫人として、悠々自適な生活を送ればいいアル。

ムツミ

こ、“こんなちっぽけな旅館”って・・・!?
な、なんだこいつ・・・!!

サツキ

ムツミ!
ダメ!

ヤンタオ

・・・おや?
そこの威勢がいいのは誰アルか?

サツキ

こ、この子は・・・私の弟のムツミです。

ヤンタオ

ほほう。
じゃあ将来、私の義弟になる男アルね。

ムツミ

ケッ!
誰がお前なんかの義弟になるかよ!

ヤンタオ

・・・フフフ。
女将に似て、強情そうアルね。

まあ、強がるのも今のうちアル。
今に、ワタシに楯突いたことを後悔するようになるアルよ。

サツキ

・・・。

ヤンタオ

おっと、そうそう、今日はこれを伝えにきたアル。
最近、この旅館の近くに建ったホテルを知っているアルか?

タパホテル

ムツミ

ホテル・・・?

あ、そういや、「タパホテル」ってのがうちの近所にできてたな・・・。

サツキ

タパホテル・・・。
も、もしかして・・・!?

ヤンタオ

そうアル。

あれは我がタオ・パイグループ系列のホテルアルよ。
この須原の地が気に入ってしまって、なんとなく建ててしまったアル。

お互い経営者同士、私情は抜きにして、この須原を盛り上げていきたいアルね。

ムツミ

なっ・・・!?

ヤンタオ

フフフ・・・。
じゃあ、また来るアルよ。

ワタシとの結婚の話、前向きに考えておいてほしいアルね。

サツキ

・・・。



ムツミ

な、なんだよ、あいつ!!?

サツキ

・・・中国最大手のデベロッパー、タオ・パイ社の社長「ヤン・タオ」さんよ。

ムツミ

ヤン・タオ・・・。
なんで、そんなやつとアネキが知り合いに・・・!?

サツキ

実は1年ほど前、ヤンさんがこの須原を訪れた際、うちの旅館に宿泊されたの・・・。
そのときになぜか、私、気に入られたみたいで・・・。

ムツミ

はぁぁぁ?

じゃあ、あいつはアネキに一目惚れをして求婚してきてるってわけか?

サツキ

そうみたい・・・。

ムツミ

・・・ふーん・・・。
ま、オレがいうのもなんだけど、アネキはなかなかいい線いってるもんな。

ムツミ

・・・ってそれはともかく、オレ、あいつ、気にくわねーぜ!
うちのことを“こんなちっぽけな旅館”とか言いやがって、何様だって感じ!

ヴェロニカ

・・・タオ・パイ社。
中国だけでなく、世界の市場を相手に、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているデベロッパーね。

デベロッパーとしての顔だけでなく、IT企業としての顔ももち、観光や旅行に関するWebサービスやメディアなども展開しているわ。
日本でいえば「旅休トラベル」という旅館予約サイトが有名ね。

ムツミ

旅休トラベル・・・!?
あそこ、タオ・パイ社の運営だったのか!?

旅休トラベル

ムツミ

アネキ・・・。
もしかして、うちが「旅休トラベル」との契約を更新しなかった理由って、さっきのあいつが絡んでたりもするのか・・・?

サツキ

う・・・ん、ちょっとね。

ただ、「旅休トラベル」は契約料が値上がりしてたし、どちらにしても、契約更新は止めようかと思っていたの。

ムツミ

オレがいない間に、なんだかややこしいことに巻き込まれてたんだな・・・。

ムツミ

アネキ、安心しろよ!
オレが守ってやるからな!

サツキ

ムツミ・・・。

ヴェロニカ

それにしても、あのヤン社長・・・。
さっき、気になることを言ってたわね。
“みやび屋の近くにホテルを建てた”って。

サツキ

はい・・・。
最近、須原にできたタパホテルが、まさか、ヤンさんのホテルとは知りませんでした・・・。

ただ、私が言うのもなんですが、この須原は東京から離れていますし、東京オリンピックによる観光誘致の恩恵は受けにくい立地です。

なぜ、この場所にあんな立派なホテルを建てたのでしょうか・・・。

ヴェロニカ

もしかしたら、このみやび屋の経営を邪魔して、あなたを女将の座から引きずり下ろそうとしているのかもね。

ムツミ

えっ・・・!?
それだけのためにホテルを建設・・・!?

ヴェロニカ

まあ、さすがに考えすぎかもしれないけれど。

ただ、ヤン・タオという男は、目的達成のためなら手段を選ばないと聞いたわ。
ひとつの可能性として考えておいてもいいんじゃないかしら。

ムツミ

く、くそ・・・!!
そう考えたら、ますます、あのキツネ目の野郎からアネキを守りたくなってきたぜ・・・!

サツキ

ムツミ・・・。

サツキ

・・・。

ムツミ

ア、アネキ、泣いてるのか?

サツキ

だって・・・私・・・今までひとりぼっちだったから、ムツミの言葉がなんだかうれしくて・・・。

ゴメンね・・・。
ゴメンね・・・。

ムツミ

アネキ・・・。

ふたりの泣く姿を物影から見ていたボーン

サツキ(回想)

先代は・・・私たちの両親は・・・。
半年前に事故で亡くなったんです・・・。

ムツミ(回想)

アネキ、安心しろよ!
オレが守ってやるからな!

ボーン

(姉弟・・・か・・・)

ボーン

・・・。


ムツミ

よっしゃ!

あんなキツネ目野郎のホテルなんかに負けないよう、このみやび屋をガンガン盛り上げていこうぜ!

ムツミ

千里の道も一歩から!
てなわけで、Web集客の改善をがんばらなくちゃな!

サツキ

・・・でも、そのためには、今上位表示しているコンテンツからの予約者数を増やしたいところよね・・・。

ムツミ

・・・そっか。
その悩みが解決していないんだった・・・。

ムツミ サツキ

うーん・・・。

ボーン

・・・もっと“比較”のしやすいコンテンツにしろ。

ムツミ

!?

サツキ

か、片桐さん!?

ヴェロニカ

ボーン!

ボーン

・・・。

ヴェロニカ

ボーン、いいの?
アドバイスをしちゃって。

ボーン

・・・。
オレのアドバイスを中途半端に解釈され、その結果「アドバイスの効果がなかった」と言われでもしたら、オレの名に傷が付くからな。

ヴェロニカ

ふふふ。

ムツミ

もっと“比較のしやすいコンテンツ”にする・・・?

サツキ

どういうことかしら・・・。

ボーン

・・・お前たちのつくったコンテンツの弱点は大きく分けてふたつある。

ムツミ

ふたつ・・・!?

ボーン

まず、ひとつ目だ。
このコンテンツ内でのみやび屋の紹介は「USP」を伝え切れていない。

サツキ

ユー・エス・ピー・・・?

ムツミ

(さっき、ヴェロニカさんが言っていた言葉だ・・・!)

ヴェロニカ

USPっていうのはね、「Unique Selling Proposition」という言葉の略で、“他社にはない独自の強み”のことよ。

images02-21

ボーン

温泉が心地いい、料理が美味い、ゆったりとした時間を過ごせる・・・。
そういったことは、どの旅館にもいえることだ。

あらためて、このコンテンツ内のみやび屋の解説を見てみろ。
このコンテンツからは、みやび屋の具体的なUSPが伝わってこない。

これではみやび屋が選ばれる理由がない。

ムツミ

・・・!!

ボーン

そして何より、お前はあまりにも安直に、このコンテンツ内でみやび屋を目立たせようとしている。

サツキ

安直・・・!?

ボーン

あらためてコンテンツを見てみろ。

お前が紹介している「竹中旅館」と「みやび屋」では、なぜ、こんなに文章量が違うんだ?

竹中旅館の紹介文

竹中旅館は須原の地でも、3番目に古い老舗旅館です。
源泉掛け流しの温泉で身体を癒やしながら、四季折々の料理を堪能することができます。
部屋のタイプは5タイプあり、女性客に人気の和洋室では、須原の地で生産されているスキンケア用品といった女性向けのアメニティが充実し、女性の方に極上の癒やしをお届けしています。


みやび屋の紹介文

みやび屋は大正15年創業の老舗旅館です。
須原の地で三指に入る名湯である「美人の湯」と呼ばれる野天風呂は、四季の移ろいに合わせ、多彩な表情を見せます。
そんなみやび屋の温泉はアルカリ性単純温泉。
刺激が弱くお肌にも優しいため、お子様やお年寄りの方などにもオススメです。
また、古い角質を溶かし、肌の新陳代謝を促す美肌効果もあります。
まるで隠れ家のようなプライベート空間は、和室・和洋室のふたつのお部屋が選べます。
総料理長こだわりの季節の懐石料理に舌鼓を打ちつつ、窓から眺める須原の山々の絶景とともに、極上の時間を過ごせるでしょう。
歴史と伝統を守り続けるみやび屋は全国にファンも多く、リピーターの方が足繁く通う、須原を代表するお宿です。

ムツミ

えっ・・・。
だってさ、このコンテンツはあくまでも、うちのサイトにあるコンテンツだろ?
だったら、うちの旅館の説明を目立たせるのは、当たり前じゃねーか?

ボーン

・・・浅い。
浅すぎるな。

ムツミ

浅い・・・!?
な、何がだよ!!

ボーン

Webマーケティングの視点が浅いと言っているんだ。

こんなふうに自分たちの商品やサービスを他社よりも特別扱いしていると、不自然な文章にしか見えないぞ。

サツキ

た、たしかに・・・。

ボーン

このコンテンツを見るユーザーは、このコンテンツが「みやび屋」のサイトの中にあることを知った上で見るわけだからな。
こんなやり方では“客観的な信頼性”が損なわれているとしかいえん。

サツキ

客観的な・・・。

ムツミ

信頼性・・・!

ボーン

こういった“まとめ記事”は、まずは“ユーティリティ要素”を意識した“中立的な立場”を意識しておくものだ。

ムツミ

ユーティリティ要素?

ヴェロニカ

ユーティリティ、すなわち、“機能的”なコンテンツにしなさい、ってことよ。
あなたが旅館を探す際、特定の旅館だけをプッシュしているコンテンツを見つけたら、「何か裏があるんじゃないか?」と疑心暗鬼になるでしょ?
そうなってしまったら、そのコンテンツは旅館選びの参考書としては使いづらくなるわ。

サツキ

た、たしかに・・・。

ボーン

見方によっては、特定の旅館を“ゴリ押し”しているとも捉えられかねない。

ムツミ

ゴリ押し・・・!

ボーン

人は、誰かに一方的に商品をオススメされるより、“自分で納得して選んだ感”が欲しいものだ。

サツキ

自分で納得して・・・。

ムツミ

選んだ感・・・!!

ボーン

Webマーケティングとは心理戦だ。
相手の人間心理を理解した上で、行動につなげることが大切だ。

ムツミ

ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・!!
“ユーティリティ要素”ってやつを意識するには、“中立的な立場”が必要ってことはわかったけど、じゃあさ、いわゆるクチコミサイトとか、ランキングサイトとかどうなるんだよ!?
点数とか順位が付けられちまってるじゃねーか!!

ボーン

クチコミサイトやランキングサイトはとくに問題ない。
なぜなら、それらのサイトと、今回お前たちが作ったコンテンツとは、そもそも求められているユーティリティが違うからだ。

ムツミ

えっ・・・!?

ボーン

クチコミサイトやランキングサイトなどは、“評価の高い商品を教えること”がユーティリティだ。
今回、お前たちのコンテンツに求められているユーティリティは、栃木にある旅館を評価順に並べることではない。

ボーン

何かの商品を探す人にとって、クチコミやランキングというのは、とても参考になる情報だ。
だから、商品名で検索した際、クチコミサイトやランキングサイトは上位表示しやすくなっている。

しかし、商品を探す人の中には、そういったクチコミやランキングによる評価ではなく、自分の目で商品を判断したいと感じる人もいる。
そういう人にとっては、他人のクチコミや数値化されたランキングは邪魔になる場合があるのだ。

サツキ

なるほど・・・。
だから、中立な立場で情報を取り扱っているコンテンツが必要になるんですね・・・!

ボーン

そうだ。
そもそも、お前たちがほかの旅館を表だって批判などしてみろ。
ビジネスモラルに欠けた行動として見られてしまうだろう。

もし、そういった行動で短期的な売上を得られたとしても、ほかの旅館を公然と批判する旅館など、どこかネガティブな印象を残してしまいかねない。

そうすれば、長期的なブランディングに影響してしまう。

ムツミ

むむむ・・・。

ムツミ

じゃ、じゃあさ、今回のコンテンツでいろいろな旅館を中立的に紹介するとするぜ?
そのあと、どうすれば、うちの旅館が選ばれるってんだよ!?

ボーン

カンタンだ。
お前たちの旅館の「USP」をわかりやすく伝えて、選ばれやすくすればいい。

ムツミ

「USP」をわかりやすく伝えて・・・。

サツキ

選ばれやすくする・・・!?

ヴェロニカ

そう、あなたたちの旅館ならではの強み。
たとえば、お料理が独創的だったり、著名な料理長がいたり、温泉の効能がほかの温泉と比べて独特だったり、施設が由緒ある建物だったり・・・。

このみやび屋にはそういった“独自の強み”はあるの?

サツキ

独自の強み・・・。

ムツミ

あ!
“大正時代から続く老舗”ってのを強く推すのはどうだい?

サツキ

ダメだわ・・・。
うちは老舗といえば老舗なんだけど、須原にはうちよりも古い旅館があるわけだし・・・。

ムツミ

じゃ、じゃあさ、うちの野天風呂があるじゃん!
須原の名湯三選にも選ばれた野天風呂!

サツキ

それも弱いように感じるわ・・・。
“三選”という言葉を考えると、ほかにもふたつ名湯があるわけだし・・・。

サツキ ムツミ

うーん・・・。

ボーン

じゃあ、逆に聞くぞ。
この旅館の“弱み”はなんだ?

ムツミ

弱み・・・!?
よ、弱みなんて聞いてどーすんだ!?

サツキ

弱み・・・ですか・・・。
多分、たくさんあります・・・。
たとえば、半年前に先代が死去して、若い私たちが経営を継いだことだったり、「旅休トラベル」のような旅館予約サイトに掲載されていないことだったり・・・。

ボーン

・・・よし。

ボーン

なら、その弱みを“強み”に変えてみろ。

サツキ

弱みを・・・!?

ムツミ

“強み”に変える・・・!?

ムツミ

(えっ・・・、そ、それってどういうことなんだ・・・!?)

ボーン

ここまでがオレからのヒントだ。
あのコンテンツからの予約数を伸ばしたいのなら、まずは、みやび屋の「USP」を必死で考えてみるんだな。

サツキ

は、はい・・・。

ヴェロニカ

「USP」になるわけだから、ほかの旅館がカンタンには真似できない強みを見つけ出してね。

ムツミ

(そ、そんなの見つかるのかよ・・・。)

ヴェロニカ

あ、もし、どうしても答えが出ない場合はね、“コンセプト”から考えてみることをオススメするわ。

ムツミ

コンセプト・・・?

ヴェロニカ

アイデアというものは、制約の多い状態でこそ出やすいものよ。
がんばってね。

サツキ ムツミ

は、はい・・・。



その夜

事務室

PCの前で悩むサツキとムツミ

ムツミ

USP・・・。
USP・・・。

ムツミ

うーん、アネキ、うちの旅館にしかないUSPって何なんだろうな?

サツキ

そうね・・・。
うちの温泉は気持ちいいし、料理も美味しいと思う。
でも、ヴェロニカさんがおっしゃるように、「温泉が気持ちいい」なんて、ほかの旅館も同じことを言うだろうし、料理に関しても、どの宿も「うちが一番」って言う気がするわ・・・。

ムツミ

そうだよな・・・。
ほかの旅館と差別化ができないとUSPにはならないよな・・・。

ムツミ サツキ

うーん・・・。

サツキ

あと、ボーンさんのおっしゃっていた“弱みを強みに変える”ということ。
あれってどういうことなのかしら・・・。
弱みなんて、どうしようもなさそうなのに・・・。。

ムツミ

そういや、ヴェロニカさん、気になることを言ってたな・・・。
“悩んだときは“コンセプト”から考えてみるといい”って。

サツキ

コンセプトから考える・・・?

ムツミ

コンセプト・・・か・・・。
ははは、あえて、旅館ではなく、スーパー銭湯として再出発するのもいいかもな。

ま、スーパー銭湯にするには、湯船が小さすぎっか。
ははは・・・。

サツキ

もうっ・・・!
そんな無茶な企画、実現できるわけないでしょ・・・。

ムツミ

そうだよな。
そんな無茶な企画・・・。

・・・ん?

企画・・・プラン・・・。

ムツミ

・・・ああっ!?

サツキ


ムツミ、どうしたの!?

ムツミ

そうだよ!
プランだ!プラン!


うちにしかない「宿泊プラン」があれば、オンリーワンのUSPを作れるんじゃないか!?

サツキ

うちにしかない宿泊プラン・・・。

あっ・・・!!

ムツミ

そっか・・・!!
そうだったんだ!

ムツミ

そうと決まれば、話は早いぜ。
アネキ、これまでにうちに宿泊したお客さんのリストと、宿泊者アンケートを見せてくれないか?
そこに、うちの新しい宿泊プランを考えるヒントがありそうな気がする。

サツキ

了解!!



そして、3日後

朝

サツキ

片桐さん、私たち、USPを考えました

ボーン

・・・聞かせてもらおうか。

サツキ

片桐さんに教えていただいた、“弱みを強みに変える”ということ。
そこに私たちのUSPのヒントがあったんです。

サツキ

私たちの弱みであり、強み・・・。
それは、みやび屋が若いふたりが切り盛りしている旅館だっていうこと。

ムツミ

そうさ。
オレたちみやび屋は、若いふたりが経営しているぶん、ベテランの旦那や女将がいる旅館に比べると、どうしても頼りなく見られてしまう。

でも、それを逆手にとって、次のようなコンセプトを打ち立ててみたのさ。

「若者が親孝行をするための宿」ってな。

ヴェロニカ

若者が親孝行をするための宿・・・?

ムツミ

ああ、オレとアネキは両親を亡くしてるだろ?
オレたちは両親を亡くして、あらためて親のありがたみを強く感じたんだ。
そして、親孝行したいときには、親はもういないってことも・・・。

ヴェロニカ

ムツミさん・・・。

ムツミ

たしか、ことわざに「孝行のしたい時分に親はなし」ってのがあるだろ。
オレ、今になって、もっとその言葉を早く知っておけばよかったって後悔してるんだ。

多くの大人は社会人になると、仕事が忙しくなり、親の顔を1年に数回見るかどうか、ということになる。
実家から離れて暮らしてる人の中には、1年に2回くらいしか親に会っていないっていう人も多い。

1年に2回しか会えないのだとしたら、10年間で20回しか会えないってわけだろ?
それってすごく切ないじゃん。

でも、そういうことって、言われて初めて気付くことだと思うんだ。

サツキ

そういうことって、親御さんは自分から言いづらいし、若い人たちもなかなか気付きにくいんです。
だから、私たちが若者の視点で、親御さんに感謝の気持ちを伝えるお手伝いができればと思ったんです。

サツキ

そして、今回、みやび屋の新しいキャッチコピーも考えました。

ヴェロニカ

キャッチコピー?

サツキ

それはこれです!

「みやび屋に親孝行させてください」

ヴェロニカ

“みやび屋に親孝行させてください”・・・?

ムツミ

そうさ。
旅館がこんなキャッチコピーを出していれば、たとえば、親に旅行を贈りたい人たちも、自分の気持ちをストレートに伝えられるようになるだろ?
また、もし、子供がいない人であっても、うちに宿泊してもらえれば、まるで、自分の息子や娘がいるかのように温かい時間を過ごしてもらえるんじゃないか、って。

サツキ

そしてもちろん、コンセプトだけでなく、親孝行向けのプランをたくさん用意します。
たとえば次のようなプランです。

  • 普段は照れくさくて、親になかなか感謝の気持ちを伝えられない方向けに、私たちが代わりにメッセージを伝えるプラン
  • 親にゆっくりと疲れを癒やしてもらうために、連泊の際は実質お食事代だけで宿泊してもらえるようなお得プラン
  • 結婚25年目の「銀婚式」や50年目の「金婚式」向けのプラン
ヴェロニカ

素敵ね・・・!

ムツミ

オレたち、今回のコンセプトを考えるにあたって、過去の宿泊客のデータを調べてみたんだ。
すると、50代以上の人が多く泊まっていたのさ。
そのデータを見て、うちの旅館はおそらく、中高年の人にとって泊まりやすい旅館なんだろうな、と思った。

よくよく考えてみたら、亡くなった親父は、うちの施設のバリアフリー化に力を入れようとしていたみたいだし、うちの料理はヘルシー志向を意識してるし、何より、窓から眺める須原の山々の景色が、疲れた心身を癒やしてくれるからな。

だから、「親孝行プラン」はうちにピッタリだと思ったんだ。

ボーン

なるほど。

ムツミ

この「親孝行プラン」、もしかしたら、よそも真似をしようと思えばできるかもしれない。
でもさ、オレたちの「親孝行プラン」には、多分、よそにはなかなか真似できないUSPが隠れてるんだ。

ヴェロニカ

真似できないUSP・・・?

ムツミ

それは・・・。
・・・オレたちが実際に両親を事故で亡くし、今まさに心から自分たちの親に親孝行したいと思ってるってことさ。

オレは親父やお袋に会えなくなって、はじめて、家族と過ごす時間の大切さを知った。

・・・それと同時に、失った時間は二度と取り戻せないってことも・・・。

だから、世の中の若いやつらに、自分の親を大切にしろよってことをしっかり伝えたいんだ。

・・・この気持ちはUSPにつながるだろ?

ボーン

ああ。

ヴェロニカ

ムツミさん・・・。
サツキさん・・・。

ヴェロニカ

すごいわ・・・!
ふたりとも・・・!

ヴェロニカに褒められてうれしそうなサツキとムツミ

ムツミ

(や、やった・・・!
ヴェロニカさんに褒められたぜっ!)



ボーン

USPが決まれば、あのコンテンツに掲載されている「みやび屋」の紹介文も変わってくるはずだ。
その紹介文でお前たちのUSPを訴求できれば、「みやび屋」が選ばれる理由が生まれる。

ムツミ

じゃあ・・・予約が増えるかもしれねーってことだな!

サツキ

やったわ!!

ボーン

喜ぶのはまだ早い。
USPを訴求できたからといって、おまえたちの旅館の紹介文が読まれるとは限らないからだ。

ムツミ

えっ・・・!?

サツキ

紹介文が読まれるとは限らない・・・?

ボーン

あのコンテンツでは、50ほどの旅館情報が掲載されていた。
お前たちが「みやび屋」の紹介文をテコ入れしたとして、その文章を読んでもらわなければ意味がない。

ムツミ

そ、それはとくに問題ないんじゃねーのか?
だって、あのコンテンツでは、みやび屋を2番目に紹介してるんだぜ。

まあ、さすがに1番目に紹介するのはあざといと思ったから、2番目にしたんだけどな。

ボーン

あの見せ方だけでは不十分だ。
ページを勢いよくスクロールされてしまっては、見落とされる可能性が高い。

サツキ

勢いよくスクロール・・・。
(たしかに、私もiPhoneで何かのページを見ているとき、すぐにスクロールして読み飛ばしてしまうクセがあるわ・・・)

ボーン

せっかくの紹介文だ。
見落とされないよう、“情報の見せ方”を工夫しろ。

サツキ

情報の見せ方を・・・。

ムツミ

工夫する・・・!?

ボーン

もう一度、あのコンテンツを見てみるぞ。

みやび屋サイト内のまとめ記事

ボーン

このコンテンツは、ユーティリティの面ではそれほど悪くはない。
栃木県内のエリアごとに旅館情報が整理されており、ページ内リンクもあり、ある程度は使いやすい。

ムツミ

・・・。

ボーン

しかし、情報量が多いぶん、「選択のパラドックス」に陥る危険があるな。

ムツミ

選択のパラドックス・・・!?

サツキ

そ、それってどういう意味でしょうか?

ボーン

ヴェロニカ、説明してやってくれ。

ヴェロニカ

OK、ボーン。

■選択のパラドックスについて

「選択のパラドックス」という言葉はね。
人は選択肢を多く見せられるほどトクした気分になるけど、それと同時に、選択を困難に感じ、結果的に満足度が低くなるという現象を指す言葉なの。

この「選択のパラドックス」は、コロンビア大学ビジネススクールの教授「シーナ・アイエンガー(Sheena Iyengar)」教授が自身の書籍「選択の科学」で説いた言葉よ。

アイエンガー教授はある実験を行った。
それは、6種類のジャムを並べたテーブルと、24種類のジャムを並べたテーブルのふたつを用意し、それぞれのテーブルでジャムの試食と販売を行うとどうなるか?というもの。

6種類のジャムを並べたテーブルと、24種類のジャムを並べたテーブル

どちらのテーブルも、試食をした人の人数は変わらなかった。
むしろ、24種類のジャムのテーブルのほうが、試食をしていた人たちは楽しそうに見えた。

けれど、最終的にジャムを購入した人の割合を見ると、6種類のジャムを並べたテーブルでは30%の人がジャムを購入し、24種類のジャムを並べたテーブルでは3%の人しかジャムを購入しなかったの。
なんと10倍もの差が生まれたのよ。

ムツミ

えええ!?
なんで、そんな結果になっちまうんだ!?

サツキ

私なら、24種類のジャムのあるテーブルのほうが、ジャムを衝動買いしちゃいそうだけど・・・。

ヴェロニカ

ふふふ、そう思うわよね。
でもね、人間って不思議な生き物なの。

「情報はできるだけたくさん欲しい」と思いながらも、多すぎる情報は脳の負担となって、選択行動の妨げとなるのよ。

ボーン

人間の行動は不合理だからな。

ムツミ

!?

サツキ

人間の行動は・・・不合理・・・?

ボーン

このあたりの話は、今度機会があったらしてやる。

ボーン

話を戻すぞ。

複数ある選択肢の中から、特定のものを選んでもらう場合は、“選択のパラドックスを回避させること”が大事だ。

サツキ

選択のパラドックスを回避させる・・・?

ボーン

今回のサイトがクチコミサイトやランキングサイトなら、選択のパラドックスを回避させることは難しくない。
しかし、今回はあくまでも中立の立場を意識したコンテンツだ。

よって、今から言う方法を使え。

ボーン

今ある50の旅館情報はそのままに、その上に「独自の宿泊プランを展開している旅館」というゾーンを設けろ。
そして、そのゾーンでは、その下で取り上げている50の旅館の中から、オリジナリティのある宿泊プランを展開している旅館を厳選して紹介するんだ。
もちろん、その中にはみやび屋も含めてな。

「独自の宿泊プランを展開している旅館」というゾーン

ムツミ

ちょ、ちょっと待ってくれよ!
一部の旅館を厳選して掲載するってことは、特定の旅館に肩入れすることにならないのか?
さっき、うちは中立的な立場をとれって・・・。

ボーン

ああ、あくまでも、中立的な立場は大事だ。
しかし、比較の軸が明確であれば、情報を絞って見せることは問題ない。

サツキ

比較の軸が明確であれば・・・。

ムツミ

情報を絞って見せることは問題ない・・・!?

ボーン

そもそも、今回追加するゾーンでは、みやび屋をナンバーワンの旅館として紹介するのではなく、“オンリーワン”の旅館として紹介する形になる。
オンリーワンなのだから、ほかの旅館と比較して目立ってしまうのは当然だろう。

サツキ ムツミ

オンリーワン・・・!!

ヴェロニカ

自社の商品を紹介した際に、「自慢」のようなイヤらしさを感じさせてしまうのは、「他社の商品と比較して自社の商品が優れていること」を誇示するからよ。
でも、“他社と比べて優れている”という見せ方ではなく、“この商品はうちにしかない”という見せ方であれば、客観的に見ても不自然には見えないはずよ。

ムツミ

な、なるほど・・・。

ヴェロニカ

そして、そこで重要になるのが、何度も言っている「USP」なの。

サツキ

USPがハッキリしていれば、他の旅館とは違う視点で取り上げることができるというわけですね・・・!

ボーン

そうだ。
USPがハッキリしていれば、極端な話、たくさんの旅館の中から「みやび屋」だけをピックアップしても、それほど違和感はない。

サツキ ムツミ

・・・!!

ボーン

今日のアドバイスはここで終わりだ。
オレのアドバイスを元に、コンテンツをブラッシュアップしてみるんだな。

サツキ

(今日のアドバイス・・・?
もしかして、片桐さん、明日もアドバイスしてくださるつもりかしら・・・?
だったら、すごくうれしいんだけど・・・)



次の朝

朝

ムツミ

ボーンのオッサン・・・。
コンテンツのブラッシュアップができたぜ・・・。

ブラッシュアップ後の記事

ヴェロニカ

あら!早いわね。

ボーン

・・・。

ボーンは次の日もサツキやムツミたちにアドバイスをしようとしていた。
時給500万円のコンサルティングフィーを受け取るほどの男が、仕事以外でアドバイスを続けることは異例なことだった。

ヴェロニカ

(ボーン、何だかんだ言って、この子たちのアドバイスを続けてくれているわ。
・・・もしかして、この姉弟に、自分と“めぐみさん”を重ねているのかしら・・・)

ムツミ

へっへ~。
どうだい?
この文章?

実はオレ、バンド時代は、毎日のように作詞してたから、文章を書くのは得意っぽいんだよな~。

ヴェロニカ

あら、ムツミさん、バンドマンだったのね。

ムツミ

はい!
ボーカルやってました~!

こう見えても、それなりにファンのいるバンドのボーカルをやってたんすよ。

ヴェロニカ

そうなのね。

サツキ

片桐さんがおっしゃるように、コンテンツの中に「独自の宿泊プランを展開している旅館」というエリアが入ったことで、「みやび屋」の存在がグッと目立ちました!

ムツミ

へへへ~。
これで、予約数も増えっかな。

ボーン

・・・。

ヴェロニカ

・・・?
どうかしたの?ボーン?

ボーン

・・・たしかにコンテンツは変わった。
しかし、まだまだ甘いな。

ムツミ

えっ・・・!?

ボーン

こんな文章では、せっかくの「親孝行プラン」とやらも、その魅力が伝わらないままだぞ。

ムツミ

えっ・・・。

サツキ

・・・!?

ボーン

この文章はユーティリティを意識しすぎたことで、エモーショナルな要素、すなわち“感情”が伝わらなくなっている。

ムツミ

感情・・・!?

ボーン

Webマーケティングの醍醐味は、人の心を動かすことだ。
こんな文章では、人の心は動かせん。

ムツミ

(ム、ムカッ・・・。
“ユーティリティを意識しろ”って言ったのは、あんたじゃねーか・・・)

ムツミ

じゃ、じゃあ、どうすればいいんだよ・・・!!

ボーン

カンタンだ。
人の心を動かす、“エモーショナルな文章”を意識しろ。

ムツミ

エモーショナルな文章・・・!?

ボーン

お前は元ミュージシャンだったとのことだな。

ムツミ

あ、ああ。

ボーン

お前が書いたこの文章を、声に出して読んでみろ。

ムツミ

へっ?
声に出して読む・・・?

ボーン

ああ。
声に出せば、なぜこの文章が物足りないかが分かるはずだ。

ムツミ

な、なんだかよくわかんねーけど・・・。
・・・お望み通り、声に出して読んでみてやるよ。

ムツミ

すぅぅぅう~。

まるでミュージカルのように演じながら自分の書いた文章を音読するムツミとそれを見守っているサツキ、ヴェロニカ、ボーン

山々に囲まれた静かな温泉郷、須原。
その須原にある「みやび屋」では、『親孝行プラン』というプランをメインに据え、両親への日頃の感謝の気持ちを伝えたい方向けのサービスに力を入れています。
バリアフリーを意識した館内、素材を活かしたヘルシーな食事、肌に優しい温泉など、高齢者の方も安心して宿泊できる環境。
「自分たちは親孝行できなかったからこそ、多くの方の親孝行をお手伝いしたい」、その思いで、若き20代の姉弟が営むみやび屋では、若者ならではの視点で、宿泊される方の希望にあった親孝行の形を提案しています。

ムツミ

どうだ!

ムツミ

アネキ!
何か感じたか?

サツキ

え、えと・・・。
とくに問題ないように感じたわ・・・。

ボーン

“とくに問題はない”・・・それこそが問題だ。

サツキ

えっ!?

ボーン

こいつの語りを聞いていて、気分は高揚したか?

サツキ

き、気分の高揚・・・ですか?

ムツミ

ど、どういうことだよ!?



そのとき、ボーンたちの背後に、彼らを覗く謎の男の視線があった。

ムツミたちの様子を物影からこっそり見ている「井上」

井上

(ボ、ボーン・・・!
そうか・・・!
みやび屋のコンテンツが急に変化したのは、こいつがアドバイスをしていたというわけか・・・!

お、おのれ、ボーン・・・。
遠藤様に至急知らせねば・・・!)

説明しよう!

今、ボーンたちを覗いているこの人物の名は「井上」。
元ガイルマーケティング社にて、遠藤とともに、ボーンと死闘を繰り広げた男である。
彼は今、遠藤が立ち上げたバイソンマーケティング社で働き、タオ・パイ社のコンテンツマーケティング案件を担当している。

彼に関する詳細を知りたければ、前作「沈黙のWebマーケティング」を読むがよい。



ボーン

お前たちはまだ、文章における「エモーション(感情)」の重要性について理解できていないようだな。

ボーン

・・・いいだろう。
実例を見せてやろう。

ムツミ

!?

ボーン

パソコンを借りるぞ。

ムツミ

あ、ああ・・・。

ボーン

お前の文章を今、オレがリライトしてやろう。

サツキ

リライト?

ヴェロニカ

文章を書き直すってことよ。

ムツミの部屋

ボーン

すぅぅぅぅぅ・・・。

サツキ

(ボーンさんが深呼吸をしている・・!?)

ボーン

人を動かしたいのなら、相手の感情に響く文章も必要だ。

ムツミ

“相手の感情に響く文章”・・・?

ボーン

ラララ~♪ルルル~♪ラララ~♪ルルル~♪

ムツミ

(こ、このオッサン、急に鼻歌を歌い始めて、気でもおかしくなったのか・・・!?)

ボーン

(ピタッ)

ヴェロニカ

出るわよ・・・!
ボーンの大技が・・・!!

エモーショナルライティング!!

まるで鍵盤をリズムカルに弾くかのようにキーボードを叩きライティングを行うボーン

ムツミ

な、なんだこれは・・・!!?

次回予告

ボーンのリライトが始まった・・・!
彼が紡ぐ言葉は一体何を語るのか・・・!?

そんなボーンの姿を陰から捉えた謎の男。
その男の正体は、かつてボーンと死闘を演じたガイルマーケティング社の「井上」だった。

ボーンへの憎悪を静かに燃えたぎらせる井上、そして、サツキを狙うヤン・タオ。

今、あらゆるエモーション(感情)が渦巻き、風雲急を告げる・・・!

次回、沈黙のWebライティング第3話。
「リライトと推敲の狭間に」

今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!